お問い合わせ 資料ダウンロード

Re-Mat ECOLUM 人・企業・環境をつなぐ、リマトの産廃コラム

知っておくべき産業廃棄物の不法投棄

2022.11.09

産業廃棄物の不法投棄はその投棄した周辺住民への迷惑になるだけでなく環境汚染にも繋がる重大な社会問題です。産業廃棄物の不法投棄という背景から
この記事では、日本の不法投棄の現状と対策について紹介していきます。

産業廃棄物とは?

産業廃棄物とは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令によると主に事業活動に伴って生じた廃棄物20種類を指します。例えば、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類等です。画像に産業廃棄物の一覧を示しています。

産業廃棄物を不法投棄するとどうなる?

廃棄物処理法違反

産業廃棄物を不法投棄すると廃棄物処理法違反となり、個人には(違反行為をした担当者)には5年以下の懲役若しくは1000万以下の罰金またはその両方が課せられます。法人の場合には5年以下の懲役または3億円以下の罰金またはその両方が課せられます。

廃棄物処理法違反となる罰則例(一部)
・収集・運搬・処理の許可を持っていない業者に委託または委託契約書の作成・保管の不備
・マニュフェスト(産業廃棄物管理票)の未交付、記載内容の不備、虚偽記載

環境への影響

廃棄物を不法投棄すると、環境への重大な負荷となり、大気汚染や火災、悪臭などの原因になりうるだけでなく水質・土壌汚染にも繋がります。近年、産業廃棄物が不法投棄されるとそれをエサと間違えて捕食した動物や海洋生物や野鳥が苦しむ事例が数多く確認されており重大な環境問題となっています。画像のような光景が世界中で広がっています。

環境省の調査報告からみる産業廃棄物の不法投棄の現状

画像のように環境省の令和2年度の「産業廃棄物の不法投棄等の状況」によると日本の不法投棄は新規判明した不法投棄件数は139件、年間約5.1万トンであり、ピーク時の平成10年代と比較すると大幅に減少しています。

この新規の不法投棄判明事案のうち件数が最も多いのは、がれき類52件(37%)、投棄量が最も多いのは建設混合廃棄物で1.8万トン(34%)となっており依然として撲滅には至っておりません。

東京都の産業廃棄物不法投棄防止への取組み

東京都では2022年10月7日から同年12月末日まで産業廃棄物不適正処理防止連絡協議会(スクラム37)による不法投棄撲滅強化月間が始まります。

これは不法投棄の監視活動を「陸・海・川・空」で行うことで不法投棄の撲滅をより積極的に呼びかける活動です。

陸の監視

産業廃棄物収集運搬車両に対する路上調査や、廃棄物発生源への立入調査を実施。

海の監視

港湾局と連携

・港湾局監視艇に環境局産廃Gメンが同乗することで、港湾区域内の不法投棄の合同調査・監視を実施。
・強化月間期間中の港湾局清掃船への横断幕の掲示による不法投棄の撲滅PRを実施。

川の監視

建設局と連携

・建設局の指揮艇に環境局産廃Gメンが同乗することで、河川内の不法投棄の合同調査・監視を実施。
・強化月間期間中の水上バスや河川清掃船への横断幕の掲示による不法投棄の撲滅PRを実施。

空の監視

・環境局産廃Gメンがヘリコプターに搭乗することで、不法投棄等の不適正処理の監視活動を実施。

東京都HPより引用

各国の産業廃棄物の不法投棄防止への取組み

アメリカ

財団法人自治体国際化協会の「アメリカの産業廃棄物処理について」によるとアメリカでは廃棄物の半数以上が埋立て処分されており、産業排出物の排出量が多い割には中間処理に対してあまり厳しくないという側面を持っています。
よって、有害産業廃棄物が少量の場合、非有害廃棄物として処理されてしまいます。
また、アメリカでは年々廃棄物の処分場の候補地が減少しているため、リサイクルの促進に積極的です。米国環境保護庁(EPA)は2021年に
国家リサイクル戦略を発表。「2030年までに固形廃棄物のリサイクル率50%を達成すること」を目標としています。EPAの報告によると米国の廃棄物のリサイクル率は32%程度とされ、環境負荷が特に高いとされるプラスチックのリサイクル率はなんと、9%程度に止まるとのことです。
この戦略では、リサイクル商品市場の改善、原材料の選別などによるリサイクル可能な製品の増加、リサイクル過程から生じる環境汚染の減少、など5つの目標を掲げており、環境問題を意識していると見られます。リサイクル率が向上すれば自然と不法投棄防止に繋がります。

中国

中国では2015年に環境保護法が大幅に改正されました。深刻な環境汚染への懸念が問題視される中で2015年の法改正では政府の監督管理責任が強化され、違法に有害汚染物質を排出した場合の罰則が厳罰化されるなど、厳しい内容となっています。

これは、環境汚染を引き起こした企業は改善完了までに掛かる日数に対して日割り換算され原則上限のない罰金が課せられるだけでなく、違反した企業名が好評されるため社会的に深刻なダメージをうけることになります。
また環境保護部には改善命令に従わなかった場合に企業幹部の身柄拘束や場合によっては違反事業所の閉鎖や資産凍結などの処罰の執行権限があるなど、全体的に厳しく取り締まる方針です。

EU

環境省の「欧州(EU)の廃棄物輸出入に関する制度体系について」によるとEUでは「End of Waste」(ゴミの中から使用可能な資源となりうる物はリサイクルする)とのスローガンのもと、できるだけ廃棄物のまま排出しないようにする取り組みを行っています。また、産業廃棄物の最終処分場の受け入れ制限も行うことで資源としてリサイクルできるものは資源として使おうという取り組みが盛んです。

この取り組みは廃棄物そのものの絶対量を減らす取り組みと言えるので廃棄物の不法投棄の防止にも繋がるといえます。

その一方で、Redio Free Europe Radio Library の「ルーマニアがEU廃棄物の不法投棄場になった経緯」によると、EU諸国で最も不法投棄が多いのはルーマニアです。ルーマニアの環境保護庁の責任者のOctavian Berceanu は、2021 年だけで約 3,700 トンの廃棄物がルーマニアに密輸されたと述べています。

ルーマニアでは、国境でアジア諸国からの廃棄物の違法輸入が行われています。
Berceanu 氏によると、中国や他のいくつかのアジア諸国が廃棄物の受け入れを拒否したため、各国が廃棄物を投棄する場所を探しているため、過去 2 年間で流入が劇的に増加したという。
しかし、国境での違法なゴミの発見は、ルーマニアのリサイクル工場が操業をフル稼働させるために海外から購入する廃プラスチックなどの材料の合法的な輸入によってより複雑になっており、
ルーマニアの2019年のリサイクル率はわずか12%であり、これはヨーロッパで最も低いリサイクル率となっています。
また、密輸業者は、他の廃棄物をルーマニア人に販売する中古品と説明することで、税関職員の検閲を回避しています。

環境保護庁の責任者のOctavian Berceanu は、私たちは、実刑判決を課すことができるように法律を強化したいと考えています」と言い、さらに「私の観点からは、これは国家安全保障の問題です」と付け加えるなど厳罰化の傾向が顕著です。

このように世界各国で不法投棄に対する問題意識は年々意識され始めており、今後更に、顕著になっていくものと考えられるでしょう。

関連記事