改正を重ねてきた建築物省エネ法
建築物省エネ法(正式名「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」)は2018年4月から段階的に施行され、延べ床面積2,000m2以上の大規模な非住宅建築物を新築する場合に「建築物エネルギー消費性能基準」(=国の定める省エネ基準)への適合が義務付けられました。その後の2021年4月1日の改正で基準の対象が300m2以上の非住宅建築物に拡大されました。
そして今年6月に 「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」 が公布されたことで、今後3年以内の間に、住宅か非住宅かを問わず、全ての新築の建物は省エネ基準への適合が義務づけられます。なお、この法律の具体的な施行日は未だ発表されていません。
この他の主な改正内容として 「住宅トップランナー制度の拡充」 と「建物の販売・賃貸時の省エネ性能表示の推進」 また、温室効果ガスの吸収源を増やすための「木材利用の促進」があります。住宅トップランナー制度とは、大手住宅メーカーが建築する注文住宅、分譲住宅、賃貸アパート、分譲マンションについて、省エネ基準を上回る、より一層の省エネ性能の確保を誘導するもので、具体的には、2030年以降の新築住宅について、ZEH・ZEB水準(備考※)を目指すとされています。
省エネ基準とは?
省エネ基準とは、建物が備えるべき省エネ性能を数値で定めたものです。住宅の場合には、床、屋根、外壁、窓の表面積あたりの熱の損失量を基準値以下に抑えることとされており、また住宅とその他の建物のどちらにも求められるのは、 一次エネルギーの消費量を基準値以下に抑えることです。一次エネルギー消費量とは、空調、換気、照明、給湯、エレベーター、OA機器などに消費するエネルギーの合計値を指します。
省エネ基準に適合するための取組みとして、太陽光発電設備、外壁の断熱材、高断熱性の窓(例 ペアガラスや二重サッシ)、高効率の空調、LED照明、高効率の給湯(例 エコキュート)の導入が例示されています。
編集後記
今回の法改正によって、これからこの国で建築する全ての建物は、省エネ性能を高める設備が予め備わっていないと建築許可が下りない仕組みになります。また東京都も、温室効果ガス削減を強力に進めるため、新築物件への太陽光パネルの設置の義務付けなどを含めた新しい制度を導入する方針で、条例改正の準備を進めているようです。脱炭素時代にあわせて、日本の住宅やビル、それらが集まった町がこれからますます進化していく(いかざるを得ない)のだなと実感します。